いとしこいし 漫才の世界
戸田学氏による「夢路いとし・喜味こいしの時代ーしゃべくり漫才の歴史」は、近代漫才の成立・発展の歴史と共に生きたいとこい漫才の解説であり、いとこい漫才の背景を知ることができる。その他にも後に記すような関わりのあった方のエッセイなど（すでにこの後鬼籍に入られた方もおられる）が収録されている。また、高垣伸博氏、織田正吉氏の文章も貴重なものである。しかし、何と言っても圧巻は、１４編のいとこい漫才の速記がこいし師匠の解説付きで収められていることである。
例えば・・・
いと あのゥ、ちょっと君にやね……、
こい はいはい。
いと あかんこと…、あかんことと違う、きかんことを……、
こい きかんことって何や？
いと いや、いかんこと…、どかんこと……？
こい ちょっと待ってね、思い出すから。
いと 君ね。
こい はい。
いと 水深２メートルのプールに足がつくかね？
こい アホなこと言うな。わたしゃ、あんた、背がナンボあると思うねん。そんな高いことないねん。２メートルも下へ足がつくはずがないやないか？
いと つかん？
こい つかんよ、あんた。
いと つかんことを訊ねますけどもね。
こい ………？ 手間がかかるなァ……。
（「つかみ集」より）
といった調子で、読んでいるといつの間にか耳からお二人の漫才が聞こえてくるのである。漫才に少しでも興味のある人にとっては、バイブルのような本である。適当な相方が居れば、この通り漫才をやってみても良い。映像も入手して練習すれば、しゃべくり漫才の最高峰に少しでも近づくことができるだろう。
目次
ほんまの名人芸ー序にかえて 桂米朝
はじめに 喜味こいし
１．夢路いとし・喜味こいしの時代ーしゃべくり漫才のの歴史とともにー 戸田学
２．エッセイ いとし・こいし、その魅力
上岡龍太郎、河合隼雄、小松左京、沢島忠、西川きよし、藤田まこと、森光子
３．私のマンザイ放浪記
４．いとし・こいし名作選
交通巡査，恋愛勧進帳，お笑い姿三四郎，ポンポン講談，五問答，こいしさん、こいしさん，もしもし鈴木さん，親子どんぶり，花嫁の父，物売り・季節感，ジンギスカン料理，迷い犬探しています，ファーストフード初体験，わが家の湾岸戦争，つかみ集
５．いと・こいを科学する 高垣伸博
６．いとし・こいしの漫才ー作者の立場からー 織田正吉
あとがき 戸田学
(2011.1.23.追記)
本日、喜味こいし師匠がお亡くなりになられました。2003年に夢路いとし師匠がお亡くなりになられた時、いとし・こいしという漫才はこれで終わりです、と仰られたが、あちらで再結成されて、私が行った時には聴かせて頂けることを楽しみにしております。ご冥福をお祈りします。
- 商品名
- いとしこいし 漫才の世界
- 価格
- ¥2,730
- 出版社
- 岩波書店
- 発売日
- 2004-09
- URL
- http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4000221434/kanshin-1-22/ref=nosim
