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物書同心居眠り紋蔵 (講談社文庫)

物書同心とは、御番所に届けられる江戸の町のありとあらゆる願い事や諸届けを筆記し、そしてそれを然るべき所に届け帳に整理して書き写すことが仕事の同心である。中でも藤木紋蔵は、判断に困る例については、「御定書」を精査しさらに過去の判例を調べる、例繰方を務めている。内勤である物書同心は、外勤の定廻りの様な副収入があるわけでもなく生活が苦しいのだが、紋蔵がその例繰方に居るのは、彼が、ところかまわずつい居眠りをしてしまう、今で言うナルコレプシーのような奇病を持っていて、外には出せないと思われたからである。しかし、その立場ゆえに、捜査を直接行う外勤の同心などに比べて、御番所に持ち込まれる事件と人達について、冷静に見ることもできるのであろう。紋蔵の目を通し、そして見るだけでなく時には彼自身が調べたり、あるいは紋蔵に直接持ち込まれた厄介な難題(しかも無理矢理押しつけられるものも多い)をなんとかしようと努力したりする日々の中で、様々な人間模様を見せてくれる、物書同心紋蔵シリーズの第1巻である。この第1巻では、紋蔵の望む方向にはちゃんと解決しない話が特に多いが、それでも巻を経るに従って少しずつ話が動き、紋蔵とその周囲も少しずつ変わっていく。

ヒーローというよりは、寧ろうだつの上がらない主人公だからこそ見えてくる、人の心と理想と現実、それを淡々と、しかし生き生きと感じることのできる本です。
商品名
物書同心居眠り紋蔵 (講談社文庫)
価格
¥620
著者
佐藤 雅美
出版社
講談社
発売日
1997-09-12
URL
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062635992/kanshin-1-22/ref=nosim