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クリスタル・シンガー (ハヤカワ文庫 SF (575))

声楽家を目指し努力してきたキラシャンドラは、持って生まれたその声にわずかにある歪みによって、プロへの道を絶たれる。絶望の中で「クリスタル・シンガー」という人種に出会い、彼女もクリスタル・シンガーになることを決意する。

クリスタルは星間通信や宇宙船の推進動力などに必須の鉱物であるが、ボーリィブランという星でしか採れない。絶対音感を持つクリスタル・シンガーが唱いながら音波カッターを使わなければ、クリスタルは切り出せない。それこそがクリスタル・シンガーの名の由来である。

ボーリィブランに住むためには、共生生物の感染を受け入れなければならず、それにより驚異的な治癒能力と特殊能力を得る。そしてクリスタルを感じ、その反響から離れることはできない。しかし、嵐の季節の激しいクリスタルの反響を避けるために星外に脱出しても、共生生物のためにそのうち戻らねばならず、一生この星から離れてしまうことはできない。ボーリィブランで働く者はギルドに所属し、それを一生の仕事として受け入れた、プロフェッショナルな職人集団である。一般世間での名声とは裏腹に、仕事は危険と隣り合わせの過酷なものであり、また共生生物の副作用として記憶力をだんだん失っていき廃人に近づいていく世界でもある。

この本は、キラが、この特殊な世界に飛び込んでクリスタル・シンガーとなり、その力を発揮していく、サクセスストーリーである。音楽と絡めた舞台設定の巧妙さや、クリスタルと交感しながら切り出すときなどの描写も素晴らしい作品である。

作者、アン・マキャフリイAnne McCaffreyは1926生まれの女性SF作家であり、現在もご存命である。私がこれを読んだのは高校生の時であるが、強いヒロインの小説が割と好きなのは、この本に強く影響を受けているからに違いない。

現在は残念ながら絶版である。実は、今、私の手元にもない。続編の「キラシャンドラ」も絶版であり、3冊目のCrystal Lineは未翻訳である。翻訳をされた浅羽莢子さんは2006年に亡くなられた。

(2011.11.23.追記)
Anne McCaffreyさんが11月21日に亡くなられたということです。御冥福をお祈りします。
http://www.mediabistro.com/galleycat/...
http://sf-fantasy.suvudu.com/2011/11/...
http://www.locusmag.com/News/2011/11/...
http://www.tsogen.co.jp/news/2011/11/... 東京創元社
発売元
早川書房
年(代)
1984年
原題
Crystal Singer
商品名
クリスタル・シンガー (ハヤカワ文庫 SF (575))
価格
¥652
著者
アン・マキャフリイ
出版社
早川書房
発売日
1984-10
URL
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4150105758/kanshin-1-22/ref=nosim